活動実績
2019.10.31

4月の活動や支援についてレポートにまとめてみました。

つたない文章ではありますが、初年度4月の支援についてレポートにまとめました。よろしかったらご一読ください。

 

初年度四月の仲間づくり

2019.11.2

福祉事業型専攻科 ビアンカ

椿本 広美 

 

 

 

はじめに

 福祉事業型専攻科ビアンカは2019年4月に開所しました。定員20名、2学年制を取った専攻科、学校のような福祉事業所です。

 4月当初は9名の在籍で4月1日の入学式には遅刻して入学式後に登所された学生を含め、全員が出席されました。

 入学式には金子みすゞさんの「私と小鳥と鈴と」を朗読しました。「これまでの人生、つらいこと、苦しいこともありながら、違う道を歩んできた学生の皆さんがビアンカに集まった。それぞれのできる事・できないことは違っても、みんなちがってみんないい、一人一人が大切な存在」ということを伝えたかったからです。

 余談ですが、入学式のあと、学生たちが「あの詩がよかった」と言ってくれたので、「伝わった」と喜んでいたのですが…4月18日2時限目の「自己表現」の時間に「私と小鳥と鈴と」の詩を鑑賞しました。「作者は何を伝えたいのか」との問いかけのあと、私と小鳥と鈴を比較してみる、「私にできて小鳥にできないことは」、「小鳥にできて、私にできないことはことはなにか」を考えてみるなどいろいろしてみましたが、学生たちは明確に「みんなちがってみんないい」を自分のこととして実感をもって分かっていたのではなかった、ということが分かりました。

 つい最近、入学式の話になり、またも学生たちが「あの詩は良かった、あの詩を来年も朗読するのか」などと言ってくれました。その時、私は、学生たちは詩の内容を読み取ったのではなく、私の気持ちを汲み取ったのだな、と理解しました。

 その後、9名全員が登所する日はありませんでしたが、常時利用の5名を中心に多い時には7名、少ない時には3名で日々活動しています。

 今回はとりわけ、4月のプログラムを振り返り、当初の仲間づくりについて述べさせていただきます。集団作りのもうひとつ前の段階とご理解いただき、お聞きいただければと思います。

 

カリキュラムの特徴

 生活の力をつけることと伝える力をつけることの二つを柱にしています。

毎週火曜日・水曜日に調理実習を入れています。調理だけでなく、火曜日の午前中にメニュー決め、材料決め、予算だて、調理の手順、役割分担などを自分たちで決めていきます。火曜日3時限目に近くの商店街に買物に行き、翌日水曜日の午前中に調理をして、試食(昼食)を挟んで片づけ、感想を出し合います。

 大人のマナー講座では、お茶の出し方、敬語、挨拶の仕方など。暮らしのスキル・マナー講座では、当初「江戸しぐさ」(思いやりや配慮を大切にする江戸の商人の習わしを現代に生かす考え)を学びました。商店街、歩道の歩き方、電車の中でのマナーなどを学び、暮らしのスキルでは、洋服のたたみ方やボタン付け、繕いについて実習しました。

 戸外での活動、絵画、ヨガ、音楽を楽しむ、書道、ゼミなど、専攻科事業所の先輩方を見習って青年らしい活動を心掛けています。

 金曜日の午前中は自治会の時間としていて外出の企画などしてきました。これまではスタッフがリードし学生たちが話し合ってきましたが、9月末の選挙で初めての会長が決まり、実際に自治会として活動するのはこれからです。

 

オリエンテーションと仲間づくり

 4月は仲間づくりに重点を置き、学生にビアンカに慣れていただけるようにオリエンテーションに費やしました。

 「学校」とはちがうビアンカに気付いてもらえるように、「受容・共感」、「楽しい・自分が出せる・自由な雰囲気」を大切にしました。

 また、お互いを知りあうことができるように、自身を語る、しっかり話を聞く、そして質問することも大切にしました。

 その中で驚いたことは、自閉的な傾向のある学生が多い中、他の学生の話の内容をよく聞き、その話の内容に絡めて質問できることでした。

 また、毎週ある調理実習はメニューを決めることから始まりますが、バランスが取れた食事・みんなで作りたいものを基準に、一人ひとりリクエストをしてもらっています。

 単にメニューを言うのではなく、「プレゼン」(自分の「推し」の理由)をしてもらうようにしました。そのプレゼンを聞いて意見を変える学生もいましたし、「食べたい」だけでなく、調理の目的も付け加わるか、との思いからでしたが、学生たちはなるほどと思えるような理由を述べ、上手にプレゼンしていました。

 当初、ホワイトボードに向かって机を教室のように並べていたのですが、人数も少なく話し合いがしやすいようにと机を円を描くように並べて話し合うようになりました。このほうが、お互いの顔を見ながらおしゃべりができるので、名前を覚えたり、お互いが「このひとは〇〇がすき」というように特徴を捉えやすいのではないかと思いました。もちろん、距離が近すぎる、顔を見られるのがいや、という人もいるかなと危惧しましたが、結果として仲間づくりには都合が良かったように思います。

 1年生の年齢は18歳から23歳です。若い学生たちの話しやすい話題を提供し、何を話しても受け入れてもらえる雰囲気を作りました。共感の言葉を添え、拍手を大切にしました。

 

4月の予定を見ながら・・・

 ビアンカは昼休みを1時間挟んで午前・午後にそれぞれ60分の授業が2時間づつあります。

「自分の性格(好きなこと・嫌いなこと」(4日1時限目)だけの話題で60分もつのかと心配していましたが、先に書いたように、誰かの自己紹介について、他の学生が質問して話題を深めるということができました。事前に面接やアセスメント時に得た情報でスタッフが言葉を添えて話題を盛り上げました。丁寧に一人づつにスポットが当たった楽しい時間になりました。

 「授業」と言っても、スタッフが「教える」のではなく、話題や内容を提供するという方法で、パソコンを使うことで答えを出していくようにしています。

 したがって、パソコン操作は必須です。検索の方法であったり、書いてある内容をどう理解・把握するかというところでは、練習が必要でしたが、今回の学生のほとんどがローマ字入力ができ、基本的な使い方はご存じでした。

「私の、僕の好きな音楽」(4日3時限目)では、パソコンを使ってyou tubeを開いて検索し、プロジェクターを使って自分の好きな音楽の紹介をしてみんなで聞きました。K-popあり和楽器ありで、それぞれの学生の「推し」の音楽が聴けました。

スタッフも加わり、若い学生たちには懐メロを聞いていただきました。

 学生たちの中にスタッフも交じり、スタッフのことを知ってもらうことも学生たちが自分のことを話していい雰囲気づくりには役立ったと思います。

「自分の好きな〇〇」(12日3時限目)では、事前に趣味を発表してもらう様に知らせてありました。

最後の学生は読書が趣味で「余命10年」という本について紹介し、しんみりした雰囲気になりましたが、Aさんが「3歳の時に父が亡くなったことを始めて話した」と言ってくれたことが印象的でした。

「今、はやりの〇〇、とびっきりのニュース」(18日4時限目)は、毎月行う定例の授業ではありますが、自由に語りお互いに知り合うことに重きを置きました。パソコンで調べて、「流行語大賞」(10年ほど前の流行語を聞いてスタッフが盛り上がりました。)、電車の好きな学生は阪急電車の創始者について、スマホのニュースから「CDを使えない学生」など話題が出ました。

 「パソコンで興味あることを調べてみよう」(25日1,3時限目)は本来はパソコンの使い方の練習の時間でしたが、その時に興味のあることを調べて発表したことで、その人を知ってもらう事にもつながりました。その時期に救命救急に興味のある学生が「AEDの使用方法」を知らせてくれたり、他の学生も「救命救急講習」について知らせてくれたりしました。

 18日の「私と小鳥と鈴と」の鑑賞に続き、25日2時限目には同じく金子みすゞさんの「こだま」という詩を鑑賞しました。学生たちには詩を読み取るのはかなり難しいのかもしれませんが、自分がどう感じたかを語り合いました。

 当初、自分のことを話す事に抵抗感が強い人がいるのではないか、話し合いの時間が多くてイヤになる人がいるのではないか、車座になって話し合うことに距離が近すぎて抵抗があるのではないかなど心配しましたが、学生たちは嫌がらずに自分のことを話してくれたり、好きなことを紹介してくれたりしました。

 黙って椅子に座っている時には無表情に見えても話し始めると瞳を輝かせて自分の興味あることを語ってくれました。

 それぞれ、誇りや自信を持ち、自分らしさを大いに発揮したいのだと底辺にあるものを感じました

私たちも、ビアンカを楽しく心地よいところと思ってもらえるよう、冗談を交えながら楽しい雰囲気を作ってきました。

そんな中で、自分の意見を主張するのでなく他の学生に意見を求める姿、欠席している学生を心配する発言など、学生たちの気配りや優しさが随所に見られました。

 

終わりに

 四月のオリエンテーションに特化し、学生たちの仲間づくりに配慮した授業の内容や楽しく何でも話せる自由な雰囲気づくりに留意した支援について書かせていただきました。

 4月当初は学生たちも遠慮し、自分を出し切れてはいなかったと思いますが、スタッフのねがいを少しは理解してくれたのではないかと思います。

 5月以降のエピソードですが、お互いのいいところを出し合う授業の時間に、あるスタッフのことを「冗談を言って場を和ませてくれる人」と言ってくれた学生がいました。

 引き続き、一人ひとりの自分らしさを大切にしながら将来に向けての自分づくりを支援していきたいと思います。

 

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